更正、保護観察、再犯対策・・・今更なメモ

注目されだしたから慌てて真剣に更正を考えるらしいの記事で書いたとおり、絶望的刑事訴訟システム後進国の日本は、裁判員裁判で関心が高まってきて慌てて、更正に力を入れ始めるそうです。
外圧がないと変わらないのって、どうなんだ、と、つくづく呆れてしまう。

ともあれ。
今まで放置されていた問題、
そこからなのか、と脱力したくなるけれど、一気に動き始めたようだ。


http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20091122-OYT1T00041.htmから転載(強調は引用者)

全刑務所データベース統合、更生効果検証へ


 法務省は、刑務所や拘置所など全国77か所の矯正施設がそれぞれ保有するデータベースを一本化し、受刑者の情報を横断的に検索できるシステムを2011年度から導入する方針を決めた。

 再犯率の高まりを受け、施設への再入所者が以前にどの施設でどんな教育を受けたかを把握してプログラムを見直し、再犯を防ぐことにつなげたい考えだ。

 施設では現在、受刑者ごとに犯罪歴などの基本情報を収録したデータベースをそれぞれ管理している。再入所者が以前、他の施設に入っていたケースでも、当時の状況を知ることはできない。

 最近は、窃盗や覚せい剤を中心に、再犯率が高まり、受刑者に占める再入所者の割合も増えている。01〜05年は40%台だったが、06年からは3年連続で50%台となり、昨年は54%だった。また、法務省によると、最近は都道府県を越えて犯罪を繰り返し、前に入った施設とは別の施設に再び入所する受刑者も増えているという。このため、過去の施設で受刑者が受けた、更生に向けた「処遇プログラム」の内容などを把握して再犯防止に役立てることにした。

 新システムでは、受刑者名を入力することで〈1〉入所していた施設〈2〉入所中に受けた教育内容〈3〉受講期間〈4〉指導教官――などを調べることができるようにする。

(2009年11月22日03時06分 読売新聞)

都道府県を越えて犯罪を繰り返し、が最近増えた、って、何言ってるんだか、と呆れてしまう。
昔からだと思うんだけど。
むしろ、今まで住んでいたところに戻らない人が多いのでは?

ちなみに、刑務所には、最初はここ、というランク付けのようなものがあるらしいのです。
(ところが恐ろしいことに、前科がたくさんあっても、刑務所に入るのが初めて、という区分付けなので、性犯罪の場合は特に怖ろしいことになります。)

前の刑務所に入ってたとき、どういう教育を受けていたのか、もしくは受けてなかったのか、
なんて基本的なことも、全く情報共有していなかった、って、もう呆れてしまう。
次の記事を読むと余計にいろいろと勘繰ってしまう。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20091111-OYT1T00556.htm?from=nwlaから転載(強調は引用者)

看守約3千人が出張、1億円「不適切」認定

 建て替え工事を予定する刑務所や拘置所の看守が他施設の視察として、2年間で約3000人が各地に出張し、その費用約1億円が「不適切」と認定されたことが、11日に会計検査院が公表した報告書でわかった。

 法務省は、「受刑者が施設でどのように生活しているか、看守の目で見る必要があった」としているが、同じ施設に2年連続で出張した看守もいた。報告書の提出も義務づけられておらず、検査院は「視察の目的があいまい」と断じている。

 検査院によると、出張費は工事の関連予算の中から支出されていた。2007、08年度を調べたところ、全国77施設中73施設の延べ3066人が出張(全看守は約1万7000人)。総額約1億800万円を使っていた。

 ◆出張後の報告書も不十分◆

 ところが、08年度分では全体の4割ほどしか出張後の報告書が作られていなかった。用紙1枚の簡単な内容のものが目立ち、施設整備の参考になるような視察結果はほとんど見られなかったという。保存期間も1年未満と内規で決められ、07年度分の報告書は1枚も残っていなかった。

 さらに検査院が出張記録を分析したところ、1泊2日の出張では初日に3時間ほど施設を見学しただけで、翌日は施設に立ち寄らず帰途に就くケースが多数あった3人以上で出張したケースが全体の3割を占めたほか、2年連続で同じ看守が同じ施設に出向いたケースも16件、定年間際の看守を出張させたケースも139件あった。

 法務省矯正局は「施設の建て替えの際には、受刑者の動きのチェックなど、実際の処遇にあたる看守の意見は重要で、出張は必要なもの」と説明している。しかし検査院は「報告書の提出も義務づけないようでは、看守の出張に明確な目的があるとは言えない」として、看守の出張費の全額を不適切と認定した。

 同省は今後、報告書の作成を義務付け、保存期間も5年にするとしている。

(2009年11月11日13時17分 読売新聞)

情報共有していないのなら、視察は必要だったのだろう。
というか、情報共有して、視察に行くのは、参考になりそうなところだけにする、というのが普通の考えだと思うのだけど。
でも、
『1泊2日の出張では初日に3時間ほど施設を見学しただけで、翌日は施設に立ち寄らず帰途に就く』ってのは、ありえないだろう。

『3人以上で出張した』『2年連続で同じ看守が同じ施設に出向いた』
というのも、遊びと勘繰られても仕方あるまい。

『定年間際の看守を出張させた』
これはさすがに・・・ないでしょう。

そりゃあ、これだけ聞いても、看守の出張に明確な目的があるとは言えない、と判断してしまう。
出張にかこつけて遊んでると思われても仕方ない。
税金使って遊ぶなーと、思ってしまうのでした。
もう、さらにさらに脱力。


次いこう。
「再犯対策が、日本の治安を維持するかぎを握っている」なんて、
またまた当たり前のことを今から言っています。
あわせて予防教育もしっかりやってほしいです。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20091122-OYT1T01053.htm?ref=magから転載(強調は引用者)


犯罪白書 窃盗と覚せい剤の再犯を断て(11月23日付・読売社説)


 盗みと覚せい剤犯罪を繰り返させない手だてを講じる。我々が安心して生活できる社会にするには、それがポイントの一つといえよう。

 法務省がまとめた今年の犯罪白書のテーマは「再犯防止施策の充実」だ。白書は一昨年も「再犯」を取り上げたが、検挙された者のうち、再犯者が占める割合はその後も増え続けている。昨年は42%に上った。

 再犯対策が、日本の治安を維持するかぎを握っている

 白書は再犯率が高いとされてきた窃盗と覚せい剤犯罪の現状を分析した。その結果、このどちらかの犯罪で刑務所に再入所した者の7割以上が、前回も同じ罪名で服役しているという実態が浮かび上がった。

 他の犯罪に比べ、極めて高い割合である。一度、窃盗と覚せい剤手を染めると、また同じ罪を犯しやすいことの証左だろう。

 窃盗の中で最も多いのは万引きだ。盗みを犯す動機としては、男女とも「生活費の困窮」がトップとなっている。定職に就いている人の再犯率が、無職やアルバイトなどの場合と比較して低いという傾向も表れている。

 法務省厚生労働省が連携し、ハローワークなどで出所者らへの就労支援策を充実させていくことが肝要である。厳しい経済状況ではあるが、出所者を雇用する事業主の開拓も欠かせない。

 覚せい剤についても、全体としては無職者の再犯率が高い。ただ、注目すべきは、家族などと同居していない単身者の場合には、定職に就いていても再犯率は下がらないということだ。

 覚せい剤の再犯を防ぐには、就労とともに、同居者の監視の目が必要だということだろう。単身者に対しては、定期的に尿検査を実施したり、生活状況をチェックしたりする保護観察官の役割がより重要である。

 法務省は、処遇が難しい出所者の受け皿となる自立更生促進センターの整備を進めている。だが、地域住民の反対運動で、整備計画は大幅に遅れている。

 覚せい剤犯罪で服役した者に対しては、刑務所内での矯正教育だけでなく、こうしたセンターで「脱・覚せい剤」の教育プログラムなどを受けさせ、社会復帰させる体制を整えるべきだろう。

 芸能人が逮捕されるなど、覚せい剤の蔓延(まんえん)は、大きな社会問題となっている。法務省は、センターの必要性を広く訴え、理解を得ていく必要がある。

(2009年11月23日01時05分 読売新聞)

再犯がおそろしく高く、逮捕されたときには、犯人が自白した以外にもおそろしく沢山の余罪がある性犯罪は、どうなるんだろう。すごく不安。
こっちもちゃんと考えてほしい。

覚せい剤のことを書いてあるけど、たしかに最近、芸能人の事件で騒ぎになったけど、既にずっと前から、あちこちで売ってたのに。
つくづく注目されないとやる気にならないのだな。


保護観察についても、外圧がないと放置するつもりだったらしいです。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20091123-OYT1T00063.htmから転載(強調は引用者)


裁判員裁判、猶予判決の7割に保護観察


 全国の裁判員裁判で10月末までに言い渡された執行猶予判決のうち、保護観察を付けたケースが7割に上ることが、読売新聞の調べでわかった。

 昨年の保護観察付き判決は過去最低の8・3%にとどまっており、市民の司法参加で大幅に増えた形だ。これまでは執行猶予付き判決の中でも悪質な事案に付される例が多かったが、識者は「裁判員裁判で保護観察の意味合いが変わった。社会が被告の更生を見守る手段として活用している」と指摘する。

 犯罪白書によると、1960年代まで執行猶予判決の2割前後に保護観察が付けられたが、2003年に1割を割り込み、08年は過去最低だった。

 しかし、裁判員裁判では10月末までに判決があった46件のうち、10件で執行猶予付き判決が言い渡され、このうち7件で保護観察が付けられた。家族間の事件や、判決で「更生を誓っているが、意志が弱い」と指摘した被告に付される例が目立つ。

 山口地裁は9月、夫が妻の長い介護に疲れて妻を殺害しようとした殺人未遂事件で、懲役3年、保護観察付き執行猶予4年を言い渡した。判決は「被告と被害者の関係や生活環境を整え、再犯を確実に防止するため」と更生を重視した。

 懲役4年を求刑した山口地検の市川幸一検事は判決後、「被告は公判で『前向きに生きたい』と述べており、被告の立ち直りに保護観察制度が十分に機能するのではないか」と受け止め、控訴を見送った。

 9月の神戸地裁での殺人未遂事件でも、父親の頭部を灰皿で殴った被告に対し、判決は「一度は、父親の協力と保護観察機関による指導監督の下、社会の中で更生する機会を与えるのが相当」と保護観察を選択した。この裁判で裁判員を務めた男性は「被告には監督できる人が欠かせない」と思ったという。

 元裁判官の春田久美子弁護士(福岡県弁護士会)は「被告が執行猶予で即、『野放し』の状態になることに、裁判員は違和感があるのだろう」と分析。元大阪地検検事正の佐藤信昭弁護士(大阪弁護士会)は「被告に対して何らかの公的な支援があることで、裁判員も安心なのでは。今後、新たな量刑相場になるかもしれない」とみる。

 神戸地裁の裁判を傍聴した渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)は「被告と一緒に社会が更生を考える、手を差し伸べるという裁判員らの意思表示。裁くのも市民だが、更生を手助けするのも市民、ということだ」と評価。「裁判員裁判を通じて保護観察に光が当たることで、制度自体も改善され、良い影響が出るだろう」と期待している。

(2009年11月23日03時02分 読売新聞)

裁判員制度がなければ、闇に隠して、改善する気は全くなかった、というふうに読めてしまう。


法務省は、今までいったい何をしていたんだろう。
ため息しか出ない。