レイプキットの謎

何度か過去記事で言及したのだけれど、
現状、レイプクライシスセンター(ワンストップセンター)がない日本では、
被害後、警察に病院に連れて行ってもらわないと、適切なケアが受けられない。
なぜなら、警察しか、レイプキット(証拠保全などに使うもの)を持っていないからだ。


適切なケアというのは、治療、証拠採取、緊急避妊など、ごくごく当たり前のこと。
(緊急避妊は警察によっては自分で後で行ってくれ、ということにもなっているようで問題)


そして、警察に連絡しても、その場ですぐに告訴の意思を明確にしないと、病院にも連れて行ってもらえない。


怪我をした人をそのまま放置することはないくせに、
どうして性犯罪はそういう扱いをするのか、悲しい。


あくまで噂にすぎないが、
公費で緊急避妊ができるということで、女性が嘘をついて警察に連絡することがあるから、と警察は考えている、ということを、あちこちで、複数の方から聞いた。
おいおい・・・そんな物好きがいるもんかね。何時間も警察に拘束されてまで??


と、かなりこの情報には疑わしさを感じていた私だったが、
最近の報道で、謎が解けたのだった。


http://mainichi.jp/select/today/news/20091122k0000m040114000c.htmlより転載(強調は引用者)

DNA型鑑定試料:全署に冷凍庫配備 警察庁方針2009年11月22日 2時30分 更新:11月22日 3時59分



 警察庁足利事件の教訓から、DNA型鑑定を実施した鑑定試料について、全国に約1200ある警察署全署にマイナス20度の冷凍庫を配備し、再鑑定に向けた態勢を整える方針を固めた。足利事件では、18年ぶりの再鑑定で菅家利和さん(63)の無罪が確定的になったが、試料が常温で長期間保管されていたため劣化の可能性があり、再鑑定の可否が懸念されていた。冷凍保存が進めば、再鑑定に耐えうる試料が増え、冤罪(えんざい)防止にもつながるとみられる。


 警察の捜査活動全般について定める犯罪捜査規範で、「血液、精液、唾液(だえき)、臓器、毛髪、薬品、爆発物等の鑑識に当たっては、なるべくその全部を用いることなく一部をもって行い、残部は保存しておくなど再鑑識のための考慮を払わなければならない」と規定され、DNA型鑑定試料もこれに基づいて取り扱われている。保管については、03年の鑑定運用指針で冷凍保存を求めている


 警察庁によると、鑑定に使用した試料は証拠の一部として、検察庁に送致することになっている。実際は、検察庁の委託を受けて各都道府県警で保管するのが一般的だ。各警察本部の科学捜査研究所にはマイナス80度の専用冷凍庫が設置されているが、容量には限界がある。そのため十分乾燥させたうえで、担当する警察署で常温保管しているケースが少なくないという。


 08年のDNA型鑑定実施件数は、全国で3万74件に上り、03年比で約26倍に増えている。常温保管される背景には実施件数の急増もあるとみられる。だが、保管が長期にわたれば、試料が腐敗するなど劣化する可能性が高い。足利事件では、常温保管されていた女児の下着からDNAを抽出して再鑑定できたが、試料が劣化して再鑑定できなければ、菅家さんの冤罪を証明することは困難だったとみられる。


 このため、警察庁は再鑑定に備えた環境の充実を検討。良好な状態で試料を長期保存できるとして、マイナス20度の冷凍庫を導入することにした。保管対象を試料自体にするか、抽出したDNAにするかなど、詳細は今後検討する。殺人などの凶悪事件以外にもDNA型鑑定を活用する捜査現場が増えていることから、全警察署への整備を目指す方針だ。【千代崎聖史】



 【DNA型鑑定】


 DNAの塩基配列には特定の繰り返しがあり、この回数が個人で異なることから個人識別できる。警察庁科学警察研究所によるDNA型鑑定は89年に始まり、現在は各警察本部の科学捜査研究所で実施されている。栃木県足利市で90年、4歳の女児が殺害された足利事件も含め、導入当初はMCT118型と呼ばれる鑑定法が主流で、別人が一致する確率は「1000人に1.2人」。STR型と呼ばれる最新の鑑定法では「4兆7000億人に1人」で、ほぼ個人を特定できる。東京高裁が菅家さんの再審決定の判断材料とした再鑑定は、STR型で実施された。


警察庁によると、鑑定に使用した試料は証拠の一部として、検察庁に送致することになっている。実際は、検察庁の委託を受けて各都道府県警で保管するのが一般的だ。
ということは、
検察を経由しないと、証拠保全ができない。
つまり、検察にまで行くかどうかわからない状態では、何もできない。
証拠をとったはいいが、その後どうしようもできない。
ということなのだろう。


警察は助けてくれるはずと刷り込まれて育っているのに、
「告訴すると今すぐはっきりしないと病院に連れて行かず治療もしないし、証拠もとらないし、緊急避妊もしません。また、すぐに病院に行かないと証拠は消えます、3日すぎると緊急避妊すらできないです」というのは、あまりにきつい現実だ。


深く深く傷ついているのに。
安心して話せる、安全を約束してもらえる、
当然のことをしてもらえる権利が保障されない。


この現状をなんとか変えてほしい。
告訴するべき、なんて私にはとても言えない。
あまりにきつい現実だ。より多くの人に傷つけられたようなものだ。
何度、訴えなければよかったと思ったかわからない。
でも、その現実はおかしいと思う。


この記事にあるように、全ての警察署に冷凍庫を整備して、証拠を保管できるのなら、
告訴するかしないか、被害者が意思を固めるまで、時間を与えてほしいと思う。
性犯罪は被害者の心の傷が深すぎて、すぐには訴えられないということで、2000年に告訴期間6ヶ月が撤廃されたのに、全くその意味がない現状なのだから。


さらに、同じ加害者が何十人、何百人と被害者を出す現状では、
DNAを保管して、被害者が告訴しなくても、何らかのきっかけで逮捕された時には、量刑の判断材料としてほしい、と強く思う。


最近、既に服役している犯罪者が、何年も前に同様の事件(性犯罪)を起こしていることが、
未解決事件の掘り起こしで、DNAが一致して再逮捕、という報道がいくつかあった。
逮捕すると同時に、調べてほしいと、呆れながら思った。
そして、性犯罪をする人間は、モラルがこわれているので、全員とは言わないけれど、他の軽微な犯罪もしている可能性が高い。
そういうことも考慮してほしいとつくづく思う。
軽微な犯罪をした犯罪者にも、DNAをとるようにすれば、犯人不明とされることが、かなり減るように思うのだ。



被害者が安心して、安全にくらせるように。他の被害者を出さないために。
もっと根本的なところに立ち返って考えてほしい。

性犯罪の本質を知ってほしい。
強姦神話にもとづく事件以外も、きちんと犯罪として扱ってほしい。
そして、他の犯罪とは違うところが大きいということも、きちんと考慮してほしい。